過去、ちょうど30年ほど前、NYで暴騰した銘柄がありました。それは「銀」。この裏側には、ハント兄弟というあるお金持ちの企みがあったのです。
ハント兄弟はテキサス州の石油王の一族で、1973年までは全米で最も裕福な家庭でした。その数年後、アフガン戦争と第二次オイルショックで金が大暴騰。インフレ懸念でドル資産の価値が目減りしていたことから、ハント兄弟は金に比べて割安感が出ていた銀を資金逃避先に選びました。
当時の銀価格は1オンスあたり1.95ドル。1978年ごろ、兄弟は世界中の金持ちと結託して資金を調達し、翌年8月から買い占めを開始しました。手始めにCOMEX®とCBOT®へ、特に5%の証拠金で取引できるCOMEX®を中心に雪崩のような買い注文を浴びせ掛けました。当時の銀価格は1オンス9ドル。
やがて、兄弟は世界の銀の供給量の半分を買い占めてしまい、取引所は大パニックに陥りました。CBOT®は急遽取引ルールを変更し、契約の制限と証拠金の引き上げを敢行。翌年にはCOMEX®まで規制を導入した為、兄弟は不当な処置として両取引所を相手取り、訴えを起こしました。 同年1月17日、銀価格はついに1オンス50ドルへと大暴騰。
しかし、栄華は長くは続きませんでした。これだけ銀価格が上がると、他の投資家は付いて行けずに買い渋りが始まったのです。更に、高く売れるチャンスを逃すまいと、世界中の家庭に眠る銀製品が鋳潰されて市場に大量放出され始めました。供給過多となると銀価格は途端に下落し、3月半ばにはFRBによる利上げの影響もあって、銀価格は1オンス21ドルまで下落しました。
兄弟は価格維持のために買い続けるしか術はなく、一時は1日に6,000万ドルもの追い証拠金を支払うはめになるのです。そして、3月下旬には3日間で価格が40%も下落。1オンスあたり10.8ドルとなった時、兄弟はついに破綻に追い込まれることとなりました。
方々から訴訟を起こされ、多額の借金を背負った兄弟は、1987年に25億ドルの負債を払いきれずに破産。悲惨な末路となってしまいました。
銀市場の大きさは、かの有名なビル・ゲイツ氏の財産の20分の1に過ぎず(といっても莫大ですが)、独占しようと思えば人為的に出来てしまう市場であることが分かります。しかし、このことを利用していくら値段を吊り上げることに成功したとしても、自分が売り抜けるための「自分以外の買い手」の存在がなければ、あっという間に売り崩されてしまうのです。